奥歯を失ってしまったら…
日本人が奥歯を失いはじめるのは、多くが40代から50代の働き盛りといわれます。
食事の際の大きな咀嚼力を受け止め続けている奥歯は、前歯に比べると平均5年以上も短命です。
歯周病やむし歯の悪化により、やむを得ず抜歯することが主な原因ですが、まだまだ気持ちが若々しい世代にとって、奥歯を失うのは大変ショックな出来事です。また、咀嚼機能の低下を引き起こし、「おいしく食べる」という人生の喜びをも失いかねません。
しかし、奥歯を失ってしまった場合でも、代わりに人口の歯を用いて歯の機能を回復させ、食の機能を充実させることができます。
奥歯の治療
インプラント治療
健康な歯を削る必要がなく、噛む力や食感が天然歯に近いことが利点です。
治療につきましても、ごく小規模な外科手術により可能です。当院では日本口腔インプラント学会認定のインプラント専門医による インプラント治療を行っています。
インプラントの手術には手術を1回で済ませる「1回法」と2回行う「2回法」があります。当院ではおもに「1回法」による治療を行っておりますので、「1回法」についてご説明します。
1回法によるインプラント手術
- 歯肉を切開し、歯槽骨に穴を開けます。
- インプラントを埋入します。
- 歯肉を閉じ、アバットメント(インプラントと歯冠の連結部)を付けます。
- インプラントが顎の骨と結合するのを待ちます。(個人差はありますが上顎で約半年、下顎で約3か月ほど)
- 仮歯を付けて調整した後、人工歯(最終補綴物)を装着します。
これでインプラントの手術は終了です。
治療例1(下顎の第一臼歯)
- 重度の歯周病で歯根部分がグラグラ。残念ながら抜歯となりました。歯槽骨も失われています。
- インプラントを埋入します。
- 同時にGBR法という骨の再生療法を行います。骨の足りないところを人工膜で覆い、骨の再生を促します。
- インプラントが顎の骨にしっかり結合しました。
治療例2(上顎の第一臼歯・第二臼歯)
- 上顎の奥歯2本が失われていました。支台にできる歯がなく、ブリッジの適応は難しい条件です。インプラント治療に重要となる歯槽骨の骨量も少ない例です。
- ソケットリフト(上顎洞への骨移植)を行います。
- インプラント埋入部の骨を約1mm残して穴を開け、専用の器具で槌打し骨を抜きます。
- 骨と粘膜を押し上げて骨移植材を注入します。
- インプラントを埋入します。
- インプラントが顎の骨にしっかり結合しました。
部分入れ歯
金具(クラスプ)を残っている歯に引っかけて使う方法です。
失ってしまった歯の代わりとなる人口歯と義歯床を、クラスプという金具で残っている歯に引っかけて固定します。
取り外し式で手入れしやすく、喪失歯の位置や数によってさまざまな部分入れ歯があります。一番端の奥歯を喪失した場合でも、大連結子とよばれるバーを伸ばして装着することが可能で、症例を選ばず適応範囲の広い治療です。
ただ、慣れるまで違和感を覚えることと、噛む力が弱まります。
ブリッジ
失った歯の両隣の歯を支えにして人工の歯を固定し再建する治療法です。
治療方法の選択
3つの方法のうち、どれを選べばよいか、迷う患者様もいらっしゃると思います。
それぞれの治療法にメリット・デメリットがあり、患者様によって症例も様々ですので、患者様のご希望を伺い、充分なカウンセリングを行ったうえ、治療計画をご説明します。
具体的な判断内容は、
- 「失った歯の種類(生えていた場所)と歯を失った原因」
- 「これまでの治療経過」
- 「残った歯とその周囲の状況」
- 「良好な予後(治療後の状態)がより長持ちすること」
当院では、患者様に治療内容をご説明し、合意いただけました上で治療を開始する「インフォームドコンセント」を行っております。
また、主治医以外の医師の意見を聞いていただき最善の治療方法を患者様自身で選択いただく「セカンドオピニオン」を推奨しています。分かりやすくご説明させていただきますので、治療に不安がおありでしたらご相談ください。